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ー土砂災害から人々の暮らしを守る砂防工事の目的と種類ー

土木工事には道路工事や外構工事、橋梁工事などさまざまな種類の工事があります。

なかでも砂防工事は大雨や台風などが原因の土砂災害から人々の生活を守るために、なくてはならない土木工事です。

 

ここでは、砂防工事とはどのようなものか、砂防工事の種類と内容をご紹介します。

 

 

砂防工事とは

 

砂防工事とは、土砂災害を防止する手段の一つである砂防を整備する土木工事です。

 

日本は国土の7割以上を山地が占め、周囲を海に囲まれているため、毎年のように全国各地で自然災害が発生しています。

山林は道路のように舗装されていませんので、大雨により土砂災害や水害といった大きな被害をもたらします。

 

そのような自然災害から人々の生活を守るために砂防工事が必要です。

大雨や台風、地震の発生などによって、山腹に堆積している土砂が一気に押し流される土石流などの土砂災害から地域を守ります。

 

 

砂防工事の目的

 

砂防工事の目的は、土石流や崖崩れなどの土砂災害から地域の安全を守ることです。

 

必要に応じて砂防工事を実施することで、河川や渓流への土砂や倒木などの流出を防ぎます。

これにより、大雨でも山の谷あいや扇状地への土砂災害、洪水の被害等を軽減できるのです。

 

国や市区町村の砂防事業では、地域の災害防止だけでなく、山間部の自然環境の回復・保護の両面から計画が行われています。

 

地域の人々の生活を守りながら、自然環境に配慮し、地域の歴史や文化、生態系などの特性を生かせるよう、豊かで住みやすい地域づくりを行うのが砂防工事の目的です。

 

 

土砂流出対策のための砂防工事の種類

 

土砂流出に伴う下流での氾濫被害を抑制・軽減するため、砂防施設を整備する土木工事が必要です。

砂防設備はおもに次の3種類があります。

 

1.山腹工(さんぷくこう)

 

地震や豪雨などで崩れた斜面をそのままにしておくと、その後雨が降った際に崩壊が拡大して下流へ土砂が流出するおそれがあります。

また、崩壊した斜面は安定しておらず、植物の生育が難しく崩壊が拡大するという悪循環になってしまいます。

 

山腹工はこのような崩壊斜面の拡大を防ぐための土木工事です。

山腹工は大きく「山腹基礎工」「山腹緑化工」「落石防止工」の3種類に分けられます。

 

・山腹基礎工

土砂移動を抑制し、拡大崩壊の原因となる降雨や湧水を排除するため、凹凸地形の整地や土留工、水路工などの構造物を設置します。

 

・山腹緑化工

土砂の流出を抑止するため、筋工等で降雨や湧水を分散させ、植栽や種子散布等による早期緑化をはかります。

 

・落石防止工

落石被害を防ぐため、浮石や転石、亀裂の多い露岩の除去や固定をはかり、さらに落下する岩石を補捉するための防護柵等を設置します。

 

 

2.砂防堰堤(さぼうえんてい)

 

砂防堰堤は、小規模ながら山の斜面や川底・川岸などから流出する土砂を貯めて川の水の流れを緩くしたり、斜面崩壊や川の浸食が進むことを防いだり、一度に大量の土砂が下流に流出して災害を起こさないように土砂の流出量をコントロールする働きがあります。

 

砂防堰堤にはさまざまな種類がありますが、おもに以下のようなものがあります。

 

・コンクリートクローズ堰堤

最も一般的な砂防堰堤で、コンクリートの重さで土石流をくい止め、有害な土砂を貯める働きがあります。

 

 

・コンクリートスリット堰堤

コンクリートクローズ堰堤と同じタイプですが、中央部にスリットを設けており、通常は土砂を流し、洪水時には土石流をくい止めます。

 

 

・ブロック堰堤

護床工等に用いるブロックを堰堤形状に積み重ねたもので、地すべり地内に設置されることの多い堰堤です。

 

 

・鋼製枠堰堤

鋼材の枠を組んだ中に玉石等を詰めた堰堤で、地すべり地や地盤の悪い場所に多く設置されます。

 

 

・鋼製セル堰堤

鋼材でできた円筒の中に土砂を詰めた砂防堰堤です。

円筒の中に詰める素材には残土を利用できます。

 

 

・鋼製スリット堰堤(格子型)

鋼管を立体格子状に組み合わせた堰堤で、土石流や流木をくい止める効果があります。

 

 

・鋼製スリット堰堤(B型)

鋼製スリット堰堤(格子型)と同じタイプで、高さが低い場所で採用されます。

 

 

3.床固工、護岸工(とこがためこう、ごがんこう)

 

床固工、護岸工は、川の流れを緩やかにし、洪水を防ぐ土木工事です。

 

河川の勾配が急に変化する場所では、上流から流れ出た土砂が堆積しやすく、洪水が発生すると氾濫や川岸の決壊を引き起こす原因となります。

 

そのため、河床の土砂が削られることを防ぐ床固工や、川岸が水の流れによって削られるのを防ぐ護岸工などにより、河川の浸食や氾濫を防ぎます。

 

 

地すべり対策のための砂防工事の種類

 

地すべり対策のための防砂工事は、地すべりの発生原因になりかねない土の塊を取り除いたり、地下水の排水などを行う土木工事です。

土の塊を除去するには「排土工」と呼ばれる工法を使用し、地下水を抜き取る場合には集水井を設置して地すべり対策を行います。

 

地すべり対策のための砂防工事の種類には次のようなものがあります。

 

 

集水井工・集水ボーリング工・排水トンネル工

 

地すべりの原因となる土塊の地下水位を低くするための土木工事です。

土塊にある水を、孔を掘って排水します。

 

縦に掘る集水井戸、集水井戸や排水トンネルから放射状に小さい孔を掘削する集水ボーリング、大きい孔を掘削する排水トンネルの3種類があります。

 

 

排土工

 

土塊の頭部の荷重を取り除き、地すべりの滑動力を抑えるための工法です。

排土工は排土により上部の地すべりを誘発してしまうおそれがあるため、事前に十分な調査が必要です。

 

 

押え盛土工

地すべり末端の盛土で、地すべりの滑動力への抵抗力を向上させる工法です。

ただし、盛土の下方部分への地すべりリスクが高まる可能性があるため、こちらも事前に十分な調査を行わなければなりません。

 

 

杭工

不動地盤まで杭を挿入することで、地すべりの滑動力を抑える工法です。

一般的には鋼管杭が使用されています。

 

 

砂防工事は人々を災害から守るための土木工事

 

砂防工事の目的や工法の種類をご紹介しました。

 

砂防工事は地域で暮らす人々を土砂災害などから守り、安全に暮らせるように行う土木工事です。

 

近年では特に大雨や台風などによる土砂崩れなどが頻発しているため、安全確保のためにさまざまな種類の工法の中からその土地に合った土木工事を行うことが求められています。