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土木工事の土留め工事の種類・工法を解説 根入れ長の基準とは

 

土木工事には主に造成工事、土留め工事、擁壁工事の3つがありますが、土留め工事とは掘削の際に周囲の土砂の倒壊防止を目的として行います。

 

この記事では土留め工事の種類や工法について解説します。

 

3つの土木工事

土木工事には造成工事、土留め工事、擁壁工事の3種類があります。

 

造成工事

造成工事とは土地の用途を変更するために行う工事のことです。

農地や田畑、空き地などの土地を宅地に変更する場合などに行います。

 

土留め工事

土留め工事とは掘削する際に周囲の土砂の倒壊防止を目的として行います。

土留め工事では「土留め壁」をつくり、土砂の崩壊を防ぎますが、現場の状況や掘削の深さなどにより適切な方法を選択して行われます。

 

擁壁工事

擁壁工事はがけ崩れなどを防止するためにコンクリートやブロックを使用して壁を築く工事です。

また、がけ崩れの防止だけでなく土地造成の際に切土や盛土によって土地の高低差が生じた場合にも行われます。

 

土留め工事の目的

地中に構造物を造る際に所定の高さから穴を掘る必要がある場合があります。

 

この時に穴を掘るだけだと作業中に地下水が出てきて穴の側面が土砂崩れを起こすなどのトラブルが発生する可能性があります。
そのため、穴の側面に土留め壁を構築し、掘削空間を確保する土留め工事を行います。

 

土留め工事により、安全を確保した上で工事を行うことができます。

 

土留め壁の種類

土留め壁にはいくつかの種類があり、目的や土壌に合わせて施工します。

 

親杭横矢板工法

H鋼を一定の間隔で打ち込み、フランジ部分に木製の板を横向きに這わせて土留め壁とします。
比較的浅い所に構造物を建設する場合や、硬質な地盤で用いられます。

 

遮水性はないため、地下水が低い場合に用いられます。

 

鋼矢板工法

シートパネルと呼ばれる鋼製の矢板を地中に埋め込み、土留め壁とする工法です。
矢板を継手を通して一体化させ、大きな1枚の板にして使用します。

 

昔からよく利用されている工法で、比較的軟弱な地盤でも適用可能ですが、鉛直に深くまっすぐに打ち込むのは難しいという側面を持っています。

 

護岸や止水壁などでも使用されています。

 

鋼管矢板工法

鋼管矢板を継手で組み合わせて作る土留め壁です。

止水性、剛性共に大きいため、軟弱地盤や海中の橋脚基礎などで使用されます。

 

地中連続壁工法

ソイルセメント工法とも呼び、土留め壁を構築する位置の地盤をセメント溶液等と拡販することでできた掘削鋼にH形鋼を挿入して連続壁とする工法です。

 

遮水性や合成が高く、規模の大きな開削工事で利用されます。
また、本体構造物と兼用で用いられることも多く、基礎やトンネルの一部として利用されることもあります。

 

土留め掘削工法の種類

土留めを行う際の掘削方法にもいくつか種類があります。

 

土留めの掘削方法には
・のり切りオープンカット工法
・全断面掘削工法(土留め壁オープンカット工法)
・アイランド工法
・トレンチカット工法
などがあります。

 

のり切りオープンカット工法

土壌の安定勾配を利用して、山留壁を設けずに地表面から掘削していく工法です。
掘削する際に掘削の周囲に安定した斜面を残しながら掘削を進めます。

 

掘削周辺に斜面(法面(のりめん))を設けて土圧を安定させ、地盤の崩壊を防ぎます。
掘削部分の周囲に敷地がある場合に採用しますが、一般的には浅い掘削、地下水の少ない地質で採用されます。

 

全断面掘削工法(土留め壁オープンカット工法)

全断面掘削工法は土留め壁や切梁、腹起しなどを使う工法です。

土留め壁を自立させるか、切梁やアンカーによって支持して全面を掘削します。

 

施工に制限が少なく比較的簡単なため、土留め工事ではよく使われます。

 

アイランド工法

中央部に先行して構造物を造り、そこから切梁を斜めに伸ばして壁を支えながら周辺の地盤を掘削し、残りの躯体を作ります。
山留工事でよく採用される工法です。

 

先に中央躯体を造ることで先行施工部は切梁がなくなるため、掘削、鉄筋、コンクリート工事の効率がアップします。
広く浅い掘削工事に有効で、コスト面と安全性からよく採用されます。

 

アイランド工法は地下構造物が分割施工となる分、工期が長くなる傾向があります。
そのため、新設工事では採用されることが少なく、解体工事で採用されることが多い工法です。

 

トレンチカット工法

トレンチカット工法とは、構造物の外周部にトレンチを掘削して構造物を先に構築し、その後内部を建設する掘削工法です。

 

トレンチカットの「トレンチ」とは、深さの方が幅よりも大きい溝のことを指しています。
構造物の山留工事を行わず、構築した構造物を山留の代わりにして内部の掘削工事を行います。

 

トンネル工事では溝断面掘削工法とも呼ばれています。

 

土留めの根入れ長の基準

土留めを安定に保つために、土留め壁の根入れを十分確保しなければなりません。

 

土留め壁の根入れ長さの基準は以下となり、基準のうち最も長いものを採用します。
・最小根入れ長さは3.0m。但し、親杭は1.5mとする
・掘削底面の安定から必要となる根入れ長
・土留め壁の許容鉛直支持力から定まる根入れ長
・根入れ部の土圧と水圧に対する安定から必要となる根入れ長
・根入れ長は掘削完了時及び最下段切梁設置直前の時に、それぞれつり合い深さの1.2倍以上を確保する。

 

例えば自立式タイプで、掘削深さが3.0m以上のとき、
・親杭横矢板壁の場合:最小根入れ長3.0m
・鋼矢板壁、SMW壁の場合:最小根入れ長3.0m
つまり、掘削深さが3.0m以上の場合は土留め壁の種類に関わらず最小根入れ長は3.0mとなります。

 

掘削深さが3.0m未満のとき、
・親杭横矢板壁の場合:最小根入れ長は掘削深さと同等とする
・鋼矢板壁、SMW壁の場合:最小根入れ長は掘削深さと同等とする

 

つまり、掘削深さ3.0m未満の場合は土留め壁の種類に関わらず最小根入れ長は掘削深さと同等とします。

 

土留め工事にはさまざまな種類・工法がある

土留め工事の種類や工法について解説しました。
土留め工事にはさまざまな種類や工法がありそれぞれ特徴がありますので、目的や地盤の状態により適切なものを選ぶ必要があります。

 

また、土留め根入れ長等、工事をするにあたってさまざまな基準が設けられており、基準に従った工法を行う必要があります。