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土木工事の排水処理の基礎知識・汚濁水対策の必要性とは

 

建設工事ではその内容により汚濁水が発生する可能性があります。

 

一般的な建設工事からの配水に関しては社会問題にならない限り水質汚濁規制の規制対象にはなりませんが、事前にその水域でどのような規制がなされているかの調査は必要です。

 

また、河川に放流する汚濁水については河川管理者で届け出と許可が必要であり、適切な排水処理が必要です。

 

この記事では土木工事の排水処理について解説します。

 

汚濁水対策の必要性

河川工事など土木工事で掘削作業を行うと、汚濁水が川に流出してしまうことがあります。
このような場合、そのままにしてしまうと川が汚れて問題が発生する可能性があります。

 

汚濁水の影響が出やすいものの代表例としては漁獲量が挙げられます。
安心安全な魚を消費者に提供するためには汚れた水を綺麗にすることは必須となります。

 

水が汚いままだと、消費者の食生活に影響を与えるだけでなく、猟師などほかの事業者の仕事にも影響を与えてしまいます。

 

このように、汚濁水の流出は影響が大きく、汚濁水対策は非常に大切です。

 

水質汚濁防止法とは

水質汚濁防止法とは

水質汚濁防止法は工場等から排出される有害物質を含む水質汚濁物質について、物質の種類ごとに排水基準を定めており、水質汚濁物質を排出する者はこの基準を守ることが必要とされます。

 

また、有害物質を含む特定地下浸透水を地下へ浸透させてはならないことになっています。

 

対象となる事業者

水質汚濁防止法の規制となる事業者は「事業活動を行っている者」です。
個人、法人問わず、民間企業、学校、行政機関なども含まれます。

 

汚濁水の排水基準

水質汚濁防止法では特定施設から排出される汚水または廃液を「汚水等」、特定事業場から公共用水域に排出される水を「排出水」と定義しています。

 

排出水の汚染状態により基準が定められていますが、基準には全国一律のものと、さらに上乗せされた上乗せ基準が定められていることもあります。

 

一律排水基準

水質汚濁防止法では、特定施設を有する事業場から排出される水について、排水基準以下の濃度で排出することを義務付けています。

 

排水基準により規定される物質は大きく以下の2つに分類されています。

 

①有害物質項目…人の健康にかかる被害を生ずるおそれのある物質に係る項目
②生活環境項目…水の汚染状態を示す項目

 

上乗せ排水基準

一律排水基準では不十分な地域において、都道府県が条例により定める基準です。

 

上乗せ基準の一部として、排水量の裾下げもあります。
これは1日の平均的な排水量が50㎥未満の事業場に、生活環境項目の基準を適用できるように条例で定めたものです。

 

事業者が行わなければならないもの

対象となる事業者には以下の義務があります。

 

特定施設等についての届出

「特定施設」「有害物質使用特定施設」「有害物質貯蔵指定施設」を設置する際は事前に都道府県または市町村に届出が必要です。

 

届出の場所は地域により異なりますので、窓口に問い合わせるかホームページで情報を確認しておく必要があります。

 

排水基準等の遵守

水濁法12条では、排出水を排出する者は、その汚染状態が当該特定事業場の排水口において、排水基準に適合しない排出水を排出してはならないとされています。

 

排出水、地下浸透水の測定と記録

水濁法14条で、排出水を排出し、または特定地下浸透水を浸透させる者は、環境省令で定めるところにより、当該排出水または特定地下浸透水の汚染状態を測定し、その結果を記録・保存しなければならないとされています。

 

事故時の措置と届け出

特定事業所で破損や事故が発生した場合、特定事業所の設置者はただちに応急処置をするとともに、事故の状況と講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければなりません。

 

公害防止管理者の選任

「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」について、水濁法でいう「汚水」「廃液」を排出する施設が設置されている工場のうち、政令で定める特定工場では「公害防止管理者」を選任しなければなりません。

 

公害防止管理者は水質検査を実施し、その結果に基づいて公害を防止するための技術的措置を行います。

 

届出担当者がまず確認すること

水濁法に関して事業者が行うことは「基準を守る」「届出」「測定」「点検」です。
届出担当者が行う事務手続きは「届出」のみとなります。

 

届出担当者はまず、以下の点を確認し、必要な事務手続きを行います。

 

自社の届出状況

まずは実際の自社の届出を確認します。
これまで特定施設の設置や変更があった場合は届出書の控えがあるはずです。

 

事業所が複数ある場合は事業所ごとに届出が必要です。
届出先は地域によりさまざまで、都道府県の場合もあれば市区町村の場合もありますので事前に確認が必要です。

 

特定施設

届出書の「特定施設の種類」の欄を確認し、「業種」と「施設の種類」を確認します。

 

事業所がどの特定施設に該当するか調べます。
不明な場合は自治体に問い合わせます。

 

排水状況

排出水が排水基準を超えると罰則が適用されますので、排出水が基準を超えていないかチェックします。

 

・排出水の放流場所
・排出水の水量
・排出水の水質検査項目

について確認を行います。

 

有害物質の使用状況

有害物質を使用している場合は特定施設ではなく「有害物質使用特定施設」となり、排水基準にプラスして構造基準などの遵守義務が課されます。

 

・施設の設置場所の床面・周囲
・施設本体に付帯する配管・排水溝等
・地下貯蔵施設

について構造・設備・使用方法を遵守する必要があります。

 

また、点検と管理要領の作成義務があります。
点検結果は記録し、3年間保存する必要があります。

 

届出が必要な場合

届出が必要なケースは

 

①特定施設・有害物質貯蔵指定施設を新設するとき
②届出内容に変更が生じたとき
③事故が起こったとき

となります。

 

新設、変更の場合は工事着手予定日の60日前までに届出を行います。

 

土木工事では環境対策を十分に行う

土木工事、下水道工事、建築工事では汚濁水が発生することが少なくなく、河川の水質異常の原因となってしまうこともあります。

 

環境汚染は私たちの生活に大きな影響を与えますので、土木工事をはじめとした建設事業者は汚濁水については法令を遵守し、必要な場合には届出とルールに基づいた対策をしっかりと行って施工作業を実施しています。