複雑な形の土地や傾斜になっている土地は造成工事が必要です。
土木工事により造成を行い、土地を使いやすく整え、土地に建物を建設しやすくなります。
では、造成工事はどのような流れで行われるのでしょうか。
今回は、造成工事の流れや造成工事の際によく行われる開発許可申請の流れをご紹介します。
造成工事とは
造成工事とは、傾斜になっている土地や山、田畑がある土地を宅地や駐車場など、用途に合うように整備する土木工事のことです。
土地をただ平らにすれば良いというわけではなく、土地の区画や形を変えて目的に合った土地にするために行います。
形だけでなく、造成工事では土地の高低を変えることも行います。
土地が高いところは切土をし、反対に低いところには盛土をして土地の高さを調節します。
さらに、地盤が軟弱な土地では地盤改良のための土木工事が必要です。
また、地震などの自然災害が起こったときにも安全性が確保される必要があります。
そのため、造成工事を行う際には宅地造成等規制法に基づき、区域内の都道府県に申請しなければなりません。
造成工事が必要な土地
造成工事が必要になる土地は大きく3つあります。
変形している土地
土地の形は必ずしも四角いとは限りません。
住宅や街を造るときには土地が四角い方が開発しやすいため、有効活用できるように四角く形を整えます。
道路との高低差がある土地
山あいで傾斜が激しい土地や田畑などは切土や盛り土を行い、道路とほぼ同じ高さになるように造成工事をします。
地盤が弱い土地
主に切土をする場合は、元々土地の地盤に問題ない傾向があります。
一方で、田んぼなど道路よりも低く柔らかい土地に盛り土をする場合はしっかりと地盤を固めながら盛り土を行う必要があります。
造成工事の流れ
土地の造成工事は一般的に以下の流れで行います。
1.地鎮祭
土地のお清めとお祓いをし、安全祈願を行います。
2.地盤調査
まずは地盤調査を行い、土地の形質や強度を確認します。
土地の上に建物を建設する場合には、一定の地盤強度が求められます。
もし、土地が必要な強度に達していなければ補強の必要があり、強度を把握しておくことが重要です。
3.整地・地ならし
整地とは、土地をならして地固めをする作業です。
建物を解体した土地では、建物を解体したコンクリートのかけらや大きな石など、さまざまなものが散乱しています。
このような障害物を取り除き、土地をきれいに整えます。
整地の方法には重機を使った「粗整地」、コンクリートやアスファルトによる舗装など、さまざまな種類があります。
4.伐採・伐根
土地に木や根が残っていると建物の建設の邪魔になるため、取り除きます。
木の根を残したままにしていると、次の工程となる地盤改良作業に支障をきたすだけでなく、建物を建築したあとに地盤沈下やシロアリ被害などの恐れがあります。
特に山の斜面を切り開いて建物を建設する用途で使用する土地の場合は注意が必要です。
5.地盤改良
地盤調査により、強度が十分でない土地では、地盤改良工事を行います。
地盤改良工事は主に次の3つの工法があります。
・表層改良工法
軟弱な地盤が2m程度の場合に採用される工法です。
杭は打たず、セメントなどの凝固剤を混ぜ合わせて強固な地盤をつくります。
・柱状改良工法
軟弱な地盤が2~8mの場合に採用します。
地盤に穴を開け、その中にセメントを流し込み、支持地盤まで強固な「地盤改良杭」と呼ばれる柱を作る工法です。
・鋼管杭工法
軟弱な地盤が5~10mの場合に採用される工法です。
鋼管杭を打ち込み、荷重を支持地盤に伝えます。
6.盛土・切土・土留め
土地が周辺の土地よりも低い場合には浸水被害を抑えるため、盛り土や土留めを行います。
反対に土地が周辺よりも高い場合は切土を行い、建設できる高さにします。
7.残土処分
造成工事が一通り終了したら残土処分を行います。
土木工事では大量の土砂が発生するケースは少なくありません。
残土を残したままでは建設工事に入れず、見栄えが悪いほか、砂埃が周辺に舞ってしまいます。
残土処分を行い工事は完了となります。
開発許可とは
宅地開発のために造成土木工事を行いたい土地が森林や農地である場合は、注意しなければなりません。
一定規模を超える土地の開発には、都市計画法により都道府県知事による開発許可が必要です。
都市計画法は1968年に制定された法律で、都市整備を計画的に行うための基本的な仕組みが定められています。
開発行為を許可制にすることで、都市が健全で秩序ある発展を遂げるようにするのが目的です。
開発許可の必要ない物
開発許可は
市街化区域や市街化調整区域内で一定規模以上の開発行為を行う際には都道府県知事から開発許可を受ける必要がある
と定められています。
一方、開発許可が必要ない土木工事は次のようなものです。
一定面積未満のもの
①市街化区域…1,000㎡未満(首都圏の一部区域は500㎡未満)
②準都市計画区域および非線引き都市計画区域…3,000㎡未満
③都市計画外区域…10,000㎡未満
建設予定物に関する除外規定
建築物の使い道によっては許可不要の場合があります
①定められた区域に、農林漁業用の建物を建てる
②これらの従事者の住宅を建てる
③学校や福祉施設・医療施設を除く、公共性のある建物の場合(駅、鉄道施設など)
開発事業の内容に関する除外規定
①都市計画事業・土地区画整理事業による場合
②国が保有する河・海・湖など公有水面の埋め立てによるもの
社会通念に基づく除外規定
①災害時の応急処置を行う場合
②仮設建築物の建設・土木事業の一時的使用の場合
開発許可申請の流れ
開発許可申請は、都道府県知事または市長に提出します。
申請は次のような流れとなります。
①開発予定標識の設置
②近隣住民への説明
③同意・協議
④開発行為許可申請書の提出
⑤審査開始
⑥開発行為許可通知
⑦土木工事着工
⑧土木工事完了
⑨検査済証の交付
⑩工事完了の公告
開発許可申請を出し、申請が許可された場合は開発登録簿が作成されます。
開発登録簿とは、開発許可がされた土地の許可の概要を記載した帳面で、調書と土地利用計画図からできています。
造成工事の流れを把握し建設工事の予定に合わせて計画する
造成土木工事の流れ、開発許可申請の流れをご紹介しました。
土地に建設を予定している場合は、建設工事の予定も考慮して造成土木工事のスケジュールを計画することが大切です。